漢方エッセイ

がん

当院はがん専門の漢方医院としてもよく知られております。日本全国からいろいろな臓器のがん患者さんが私のところにいらっしゃいますが、初期がんの方よりも、末期がんの方のほうがより多くいらっしゃいます。病院でやれることは全部やった、これ以上の治療法はないと言われ退院した方、余命数か月と言われた患者さんもいらっしゃいます。

がん治療においては余命が何か月だとか、転移された臓器の数がいくつとか、がん細胞に侵されたリンパの範囲がどのくらい広いかなどの問題も無視できない重要なことだと思いますが、これよりもっと大切なことがあります。それは医師も患者さんも、どんなことがあっても絶対あきらめないことです。

患者さんが死に対して不安を持つのが一番悪いことです。患者さんが持っている全エネルギーは、がん細胞と戦うことと生きることに専念して、集中的に使うべきだと思っています。「証」に合う漢方薬を飲むことにより、患者さんは元気を回復し、考え方もポジティブになるという効果が得られます。

また、最近は、手術前後に漢方薬を求めて来院する患者さんが増えています。手術前後に漢方薬を飲むと回復も早くなるし、抗がん剤治療後の副作用である白血球、赤血球、血小板の減少の抑制と回復の作用があるからです。定期的な抗がん剤の点滴の前（約2週間〜20日前）にも漢方薬を飲めば、同じように血球の減少の抑制と回復を早くすることができます。

漢方薬でがんが完全に消えなくても、がん細胞の増殖を抑制したり、痛みを和らげたりして、がんと共存しながら日常生活ができ、身の回りのことができるようにする助けになればと思います。